かわいた喉




 あたたかい指先が私をなぞる。
 甘くやわらかな顔と声音で、冷酷で残酷なことを言う。
 ナイフのように無慈悲な仕草と言葉で、私を傷つける。
 「嫌なら、逃げればいいじゃないですか」と彼は言う。
 まったくそのとおりだと思う。
 必死に抵抗して、彼の手から逃げればいいだけだ。
 しかし、なぜだかそうする気にはなれない。
 火で炙られた鉄で心を溶かされているような。
 そうして溶かされた心は彼の好きなように変形する。
 もう逃げ場はない。
 変形したものを、戻すことも、捨て去ることもできない。
 私は、ときどき、狂おしいほどに彼を求める。
 彼のすべてが、ほしいと思う。
 彼は決まって、すべてを与えてはくれない。
 いつもどおりの美しい笑みをたたえ、私から離れていく。
 そうして放ったらかしにされている間にまた、物ぐるわしい発作が起こる。
 身を切り裂きたくなるほどに、彼を求める。
 そしてそれはいつも、与えられたり、与えられなかったりする。
 私は汚れた手で彼に触れる。
 責任をとってくれ、と嘆く。
 彼の研究。その遺産。――私の刻印。
 与えられたものは彼の一部でしかない。
 その破片がいつまでも私の中に刺さっていて、血を流し続ける。
 彼がすべてを与えたのは、愛したのは、私ではない。
 私はただの通過点に過ぎない。
 彼は永遠の存在になった。
 憎しみと、悲しみが私の中に残った。
 もう彼が他者に何かを与えることも、私が与えられることもない。





博士→→→→ガストっていう永遠のひとりよがりが萌えます